滲出性 中耳炎
鼓室(鼓膜の奥の部屋)に水がたまり、鼓膜の振動が悪くなり、難聴となる病気です。
痛くない中耳炎なので、なかなか気づかれないことも多い疾患です。そのため、3歳児検診で本疾患の検出のための検査を行っている市町村もあります。
9~10歳になるまではなかなか治らないことも多いですが、多くの場合はそのくらいの年齢になると難聴を残さず治癒します。しかし、いずれ治るからといって放っておくと難聴が残ってしまうこともあります。
2、3歳から10歳くらいの小児に多い疾患です。
※90%以上が、小学校低学年を過ぎると自然治癒します。治療での完治は難しい疾患です。治癒する年齢までの間に、日常生活に支障のない程度の聴力を保つ事が大切です。一端治っても、10歳くらいまでの間は再発の可能性があります。
※合併症(癒着性中耳炎、真珠腫性中耳炎など)を残すことも希にありますので、自然に治るからと放っておくのは禁物です(合併症を起こすと難聴が残ってしまいます)。


原因
急性化膿性中耳炎(いわゆる中耳炎)は細菌の感染によっておこります。
抗生物質の投与により細菌が無くなっても、耳管機能が悪いと貯留液が排泄されず、鼓室が陰圧になり滲出性中耳炎に移行していくと言われています。
小児の場合は、以下のような耳管の通りを悪くする要因がいくつかあります。
- 慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)、咽頭炎などの鼻腔・咽頭の炎症
- アデノイドの肥大
- 耳管機能の未熟性(本来の圧を調整する機能がまだ十分備わっていない)
- アレルギーの関与
- 鼻すすり(鼓室内の空気も吸い出して、鼓室を陰圧にしてしまうしまう)
など。
好発年齢
2、3歳頃からみられますが、5~6歳がピークで、8~10歳を過ぎると急激に減少します。この位の年齢になると耳管機能が自然に改善してくるものと思われます。
症状
- 耳が聞こえにくい(難聴)、耳がつまる感じ(耳閉感)
- 耳鳴り、頭を動かすと音がする
- 呼んでも返事をしない、テレビの音を大きくする、前の方で観るなど
痛みも無く、難聴も中等度までなので、子供が自分で症状を訴えることは殆どありません。難聴について周囲の人が気づいたり、検診などで難聴、鼓膜の異常を指摘されて受診する場合が多いようです。
診断
以下のような所見から診断します
- 鼓膜の混濁(鼓膜が溜まった液のために濁っている、赤みがかっている)、陥凹(鼓膜が奥へ凹んでしまう)、膨隆(外へ盛り上がる)などの変化
- 聴力検査で軽度~中等度の難聴
- 鼓膜の動きが悪い(ティンパノグラムなどの検査)
治療
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- 耳管通気療法(治療の中心となります)
- ラッパと言ったり、水を飲んだ時に鼻からゴム球で空気を鼓室へ送ります。
- 通気管を鼻から耳管開口部まで入れて空気を送ります。
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- 薬物療法
- 特によく効く薬は残念ながらありませんが、抗生物質・消炎酵素剤・去痰剤・抗アレルギー剤などの内服を行います。
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- 鼻腔・咽頭の炎症の治療
- 鼻の処置・ネブライザー、抗生物質・消炎剤・去痰剤などの内服など。
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- 鼓膜切開※
- 1,2,3の治療を2ヶ月前後行い改善しない場合に行います。
鼓膜に穴を開け、中耳内の液を吸い出します。穴は、1週間程度で塞がる場合が殆どです。
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- 鼓膜チューブ留置術※
- 鼓膜切開を行ってもすぐに液が溜まってきてしまう場合に行います。
鼓膜切開をして、切開した穴へチューブを入れておきます。通常1年くらいはチューブを入れておきます。 入れている間は水は溜まらないので、ほぼ正常の聴力が保てます。
耳に水が入ると細菌感染がおこりやすいので、入浴、水泳の時は注意が必要です(耳栓の使用が望ましい)。 - ごく稀に、治った後、チューブを抜いてから、鼓膜の穴が残ってしまうことがあります。
その場合、穴をふさぐために手術が必要となることもあります。
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- アデノイド切除術
- アデノイドの肥大が高度の場合や鼓膜チューブ留置術を行い、チューブを抜去後すぐにまた液が貯留してしまう場合に行います。
入院し全身麻酔下にアデノイドを削る手術をします。
※4,5は外来で局所麻酔(耳の中だけの麻酔)で可能ですが、聞き分けのない子の場合は入院し、全身麻酔が必要となります。

合併症について
難治性のものは合併症(後遺症)を残す可能性があります。
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- 癒着性中耳炎
- 鼓膜が鼓室の内側の骨にくっついてしまう。
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- 真珠腫性中耳炎
- 鼓膜から真珠腫と言われるものが出来て徐々に鼓室内へ広がっていってしまう。
など。
この様な状態になると滲出性中耳炎が治っても、難聴が残ったり、治療のために手術が必要となることがあります。